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公正証書遺言が無効になることもある! 遺言能力の重要性と判断方法について

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法的な効力を持つ遺言書を作成するには、法律で定められた正しい作成方法で遺言書を作ることと、遺言能力を持っていることが求められます。公正証書遺言の場合、無効になるリスクが低いといわれていますが可能性はゼロではありません。

ではどのような場合に遺言書が無効になってしまうのか、それを防ぐにはどうすべきか、についてここで解説いたします。

 

公正証書遺言の安全性

公正証書遺言は比較的ほかの種類の遺言に比べて安全性は高いと考えられています。それは公証人が関与することにより、形式面のチェックを受けられることや、遺言書を公証役場で保管されること、などが主な理由です。

形式面では無効になりにくい

法令で定められた手続きにより遺言書は作成しなければなりませんが、公正証書遺言においては作成過程で公証人という法律のプロや2人以上の証人も関与しており、形式面で無効になることは考えにくいです。

遺言者自身が法律上の規定をすべて理解していなくても、公証人が作成をするため問題ありません。

保管も心配は不要

作成後の保管状態によっては紛失したり盗難に遭ったり、場合によっては改ざんなどの問題も起こり得ます。

しかし公正証書遺言だと原本は公証役場に保管されますので、改ざん・偽造などの犯罪行為の被害に遭うことは考えにくいです。紛失などの心配をする必要もありません。

遺言能力の有無がポイント

形式面での不安を持つ必要はありませんが、「遺言能力」には注意すべきです。

遺言能力とは、遺言をするために必要な判断能力(意思能力)のことを意味します。

「何をどの人に相続・遺贈させるのか」を理解できるだけの判断能力が必要で、これがない状態で作成された遺言書は形式面での要件を満たしていても無効になってしまいます。

 

遺言能力を判断する方法

認知症など知能の低下をもたらす病気にかかっていると記憶や認知機能に支障が出てしまい、遺言能力が否定される可能性が高くなってしまいます。

ただし重要なのは認知症かどうかではなく、認知症の方でも、遺言書を作成するそのタイミングで十分な判断能力を備えていれば問題なく遺言書は有効に作成できるのです。「認知症=遺言能力なし」と決めつけることはできません。

遺言能力の有無について争った裁判例も多くありますので、過去のデータも参考にするとどのように判断すべきかがわかってきます。

認知症の進行具合

認知症の症状の重さも人によりさまざまです。重度で、明らかに遺言能力がないと判断できるケースもあれば、ごく軽度で遺言能力があると判断できるケースもあります。

認知機能の程度を測る「長谷川式認知症スケール」が判断基準として有効です。これは瞬間的な記憶力や環境への認識を確かめるテストで、簡単な質問に対してどれだけ的確に答えられるかを見ます。30点満点のスコアで20点以下だと認知症の疑いがあるとされ、4点程度のスコアだと高度の認知症であると評価されます。

作成日における体調

遺言能力の有無はその都度判断します。病状が変化することもありますので、同じ人でも、場合によっては正常な判断ができて遺言能力がある日もあれば、そうでない日もあります。

そこで遺言書を作成するその日の体調などにも着目することが大事です。

遺言内容の複雑さ

同じ程度の判断能力でも遺言の内容によってはその有効性に差が出ることがあります。

もし判断能力に不安があるとしても、遺言内容が非常にシンプルで数行程度の内容であれば、本人に意味を理解する十分な能力があるといえるかもしれません。

一方、認知症がそこまで進行していなくても、遺言書を使った信託の設定をしていたり複数の不動産の分割について細かく指定していたり、多くの条項を設けて複雑な遺言書を構成しているときは、遺言者自身が意味を理解して作成したと評価されない可能性が高くなります。

そこで本人の状態に見合った遺言内容かどうかも重要です。

 

公正証書遺言でも遺言能力の証明が大事

公正証書遺言は、自筆証書遺言や秘密証書遺言に比べて無効になるリスクが小さいですが、それでも「公証人と証人がいるから有効」と単純に判断することはできません。

実際、公正証書遺言が無効となった裁判例も存在します。そこでできるだけ有効であることを担保するには、「作成時点では遺言能力があった」という証明をできるようにしておくべきです。

例えば作成日に医師の診断を受けて診断書を作成してもらうこと、その日に長谷川式認知症スケールでテストをしてもらうこと、その日の状態を動画で撮影してもらい会話の様子などを記録すること、などが効果的といえます。