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相続開始から遺産分割協議・相続税申告までの流れと 各種相続手続のポイントについて

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配偶者や父親・母親など身近な家族が亡くなると相続が開始され、その亡くなった方(被相続人)の財産を引き継ぐことになります。手続を行わなくても相続自体の効力は生じるのですが、トラブルを避け、より良い形で相続をするためには、さまざまな手続を行う必要があります。

そこで当記事では「相続が始まると何をしないといけない?」と不安や疑問を持っている方に向けて、相続手続のイメージが掴めるように全体の流れを紹介します。

 

相続手続全体の流れ

被相続人の相続人、ご家族の方などは、相続に関してどのような手続を進める必要があるのかを理解しておきましょう。

手続全体を簡単にまとめた下表を参考にすると良いです。

 

相続手続

手続の内容

死亡届の提出

亡くなったことを市区町村に対して知らせるため、死亡届を提出する。

遺言書の確認

遺産分割協議の内容にも影響するため、遺言書が作成されていなかったかどうかを確認する。

自宅での保管、法務局や公証役場での保管、銀行での保管、あるいは弁護士・司法書士などの専門家や親しい友人などが保管していることもある。

相続人の調査

相続の当事者となる相続人の存在を調査する。

被相続人の戸籍謄本を取得し、民法の規定に従って法定相続人となる立場の者を特定し、その人物に連絡を取っていく。

なお、法定相続人となる人物は基本的に被相続人の「配偶者」「子ども」「親」「兄弟姉妹」である。

※被相続人の孫、祖父母、甥・姪などが法定相続人となるケースもある。

相続財産の調査と評価

遺産分割協議を進めるために、相続財産の内容を把握する。

被相続人の現金・預貯金・不動産・自動車・貴金属・株式など、あらゆる財産を調べていく。借金などの負債も相続財産に含まれるため必ずチェックが必要。

また、相続税の計算にも関わってくるため、各財産の評価額を査定することや過去の贈与分や特別寄与分についても調べておく。

相続放棄・限定承認の手続

相続は強制されるものではなく放棄することも可能。「相続放棄」をする場合は家庭裁判所で相続放棄の申述を行う必要がある。借金などが多い場合は要検討。

財産状況が不明瞭・複雑である場合は「限定承認」も可能。裁判所に申し立てることにより、相続自体受け入れるが責任の範囲を積極財産に限定するための手続。例えば相続財産が現金1,000万円と借金1,500万円であったとしても、1,000万円の範囲で返済の義務を負うということ。リスクを軽減できるが、相続人全員で手続を進めなければならず、煩雑で事務負担も大きい。

遺産分割協議

相続人全員で、相続財産の分割(分けかた)について話し合う。

どの財産を誰が相続するのか、原則として全員の同意があれば自由に分割できる。法律上は法定相続分が規定されており、財産を取得する割合の1つの基準とすることができる。

協議内容は「遺産分割協議書」として明らかにし、主張内容の食い違いを予防するとともにその他の手続をスムーズに進めやすくしておく。

なお、相続人全員の同意がなければ遺産分割協議は無効となりやり直しが必要になる。そのため相続人の調査も入念に行う必要がある。

取得財産の名義変更手続

動産については基本的に名義変更の手続も不要。遺産分割協議後、実際に引き取れば所有権を獲得できる。

一方で不動産については登記申請により名義変更を行う必要がある。民法の改正により、2024年4月1日からは相続不動産についての所有権移転登記が義務となる。

預貯金や有価証券は金融機関所定の手続を進め、その他財産についても必要に応じて名義変更を進める。

相続税の申告と納税

相続や遺贈などにより取得した財産については相続税が課税される可能性があるため、税の計算を行い、必要に応じて申告と納税を行う。

 

期限のある手続に要注意

特定の手続については「期限」に注意が必要です。

主なものとしては以下が挙げられます。

  • 死亡届の提出:7日以内
  • 相続放棄/限定承認:3ヶ月以内
  • 準確定申告:4ヶ月以内

※個人事業主や副業収入のある方など、確定申告を行うべき方が亡くなったときは、その年の途中までの分につき確定申告(「準確定申告」という。)を行う必要がある。

  • 相続税の申告:10ヶ月以内
  • 遺留分侵害額請求:1年以内

※特定の相続人には相続財産の一定割合が留保されているが、遺贈などによりその分が獲得できなかったときは遺留分侵害額請求として金銭の支払いを求めることができる。

遺留分侵害額請求に関しては起算点が「遺留分が侵害されたことを知ったときから」となりますが、その他については「相続開始を知ったときから」となります。

また、法律上の規定ではありませんが健康保険や年金などの解約手続も進めていく必要があります。これらに関してはおおむね亡くなってから14日以内に済ませておきましょう。

他にも日々の生活の中で被相続人がさまざまなサービスを利用していることが予想されますので、サブスクなど継続的に料金が発生し続けるようなサービスも早いうちに解約をしておきましょう。

 

相続に関して知っておきたいポイント

相続開始後は相続人や遺言書、財産などの調査が必要ですが、まずは被相続人の自宅をチェックしてみると良いでしょう。ただし遺言書が見つかったとしてもその場で開封をしないよう注意が必要です。

また、遺産分割では相続税の負担を考慮するのも1つのポイントとなります。

それぞれ知っておきたいポイントについて以下で説明していきます。

 

少しでも不安があるなら専門家に相談

相続手続については司法書士や弁護士、行政書士、税理士などの専門家も頼ることができます。無理にご自身だけ、ご家族だけで取り組む必要はなく、相続問題に強い専門家に相談してサポートをしてもらうことも検討すると良いでしょう。

専門家についてもらうことで各種手続がスムーズに進められるようになりますし、期限に遅れてしまうといった心配を持つ必要もなくなります。また、どのように相続人や財産を調査すれば良いのか、どうやって遺産分割協議を進めれば良いのかなど、広く助言をもらうこともできます。

相続手続に対して少しでも不安や疑問を持っているのであれば、積極的にこれら専門家を利用することがおすすめです。

 

相続開始後は亡くなった方の自宅を調べる

相続が始まると、遺言書や相続人、相続財産のことなど調査すべき事柄がたくさん出てきます。その調査を進めるためにまずすべきは、「亡くなった方の自宅を調べること」です。自宅の捜索を始めることでいろんな手がかりが見つかることでしょう。

遺言書の有無もそうですし、通帳や金融機関から送られてきた書類、契約書、現金、貴金属なども自宅から見つかる可能性が高いです。また、通帳などから口座の履歴が確認できれば、そこを起点に様々な契約関係が発覚することもあります。定期的な引き落としがされている場合は何らかのサービスに申し込んでいることが予想できますし、借金の存在が確認できることもあります。

被相続人が相続を見越して財産目録など相続手続に役立つ資料を作ってくれている可能性もありますし、まずは自宅をチェックしてみると良いでしょう。

 

遺言書の開封は家庭裁判所で行う

自宅、その他の場所から遺言書が見つかったとしても、その場ですぐに開封をしてはいけません。遺言書の書類によっては家庭裁判所で「検認」の手続を行わなければなりません。

家庭裁判所に持って行かず勝手に開封をしてしまうと5万円以下の過料を課されることがありますし、相続人間でのトラブルを引き起こすおそれもあります。

なお、公証役場や法務局に遺言書が保管されている場合、検認は不要です。

 

相続税の負担も考慮して遺産分割を行う

遺産分割の方法で悩むこともあるかもしれません。「絶対に自分が取得したい財産がある」といった事情がないのであれば、相続税の負担も意識して、納めるべき税額が全体として小さくなるように分割するのも1つの手です。

その際は、二次相続のことも忘れないようにしましょう。

今直面している相続に被相続人の配偶者が関わっている場合、配偶者控除を使うことで税額を大きく抑えることは可能です。しかし配偶者控除をフル活用するために全財産を配偶者に取得させてしまうと、その後配偶者に関する相続(二次相続)が開始されたときの税負担が大きくなるおそれがあります。

税理士の意見も取り入れて、相続税課税の観点から最適な遺産分割方法について知っておくと、支出を抑えた相続が実現できるでしょう。